今月は、秋の夕焼け空のような情景をイメージして、かげろうブレンドを作成しました。
目指した味わいは、アーモンドのような香ばしさに柑橘の風味が絶妙に調和するブレンドです。
今回のブレンドは、従来のものとは異なる点で苦労しました。
通常、コーヒーは冷めるにつれて柑橘の風味や酸味、甘さが少しずつ顕れる傾向がありますが、今回は冷めてもアーモンドのような香ばしさをお楽しみいただけるブレンドにしたかったのです。
そこで、「ケニア カリンドゥンドゥ」の豆をメインに使用し、柑橘の爽やかな風味に甘さを加えました。
しかし、ケニアの個性的な果実味が強く、アーモンドの香ばしさが十分に引き出せませんでした。
そこで、香ばしいナッツの風味が特徴の「ブラジル ベラビスタ農園」を主体に取り入れることにしました。
ケニアの個性を考慮し、ブラジルの豆を主に使用することで改善されると期待しましたが、想像とはかなり異なる結果となりました。
後味は渋みが強く残り、甘さが控えめで、味わいのバランスが崩れてしまいました。
しかし、そこで少しの「苦味」が足りないと気づきました。
ブラジルの香ばしさとケニアのフルーティな味わいだけではバランスが悪く、苦味を加えることで味わいが整うのではないかと思いました。
ただし、深煎りのコーヒーでは苦味が強すぎるため、中煎りの「グァテマラ ブエナビスタ農園」を選び、ブレンドを調整しました。
すると、液体としての丸みが舌の上で感じられ、柑橘の風味から始まりアーモンドのような香ばしい後味で締めくくるブレンドが完成しました。
「苦味」を少し加えただけで、不思議と甘さが引き立ったこのかげろうブレンドは、焙煎士としても新たな発見となりました。
夏も終わりに差し掛かり、秋への入口にふさわしいこの季節に、夕焼けの空を眺めながらかげろうブレンドと共に特別なひとときをお過ごしいただけますと幸いです。