ロクメイコーヒーの店舗デザインや空間づくりを手がけてくださっている一級建築士事務所「ひとともり」。

代表の長坂純明氏をお迎えし、ロクメイコーヒー各店舗の設計に込めた想いや、空間づくりにおける独自のこだわりについてお話を伺いました。

一杯のコーヒーとともに過ごす時間が、なぜこれほどまでに心地よいのか。その理由を紐解くインタビューです。

 

【話し手】

ひとともり 代表 長坂 純明(ながさか じゅんめい)氏

ひとともり代表・長坂氏

Q1. ロクメイコーヒーの店舗空間を設計する際、最もこだわったポイントや空間に込めた想いを教えてください。

「建築とは、その場所で人が過ごす『時間』をデザインすることです。」

私たちは建築を単なる「建物」としてではなく、その場所で過ごす時間や風景を形づくるものだと考えています。

そのため、設計を始める際は、その土地の空気感や歴史、人の流れ、街の文化へ丁寧に目を向けます。その場所に暮らす人や訪れる人の日常が、ほんの少しでも豊かになる空間をつくること。それが私たちの設計の出発点です。

 

ロクメイコーヒーの各店舗においても、それぞれの街や訪れる人に合わせて異なるアプローチをとっています。

グランスタ丸の内店

忙しく働く人々が奈良の杉の温もりに包まれ、ほんの少し肩の力を抜けるような場所を思い描きました。

 

関東一号店・グランスタ丸の内店

BAKES / FACTORY

休日の朝にゆっくりと朝食を楽しむ地域の方々にとって、気兼ねなく立ち寄れるサードプレイスとなるよう、緑や自然光、抜け感を大切にした空間をご提案しました。

ベーカリーカフェ・ROKUMEI BAKES 焙煎所兼カフェ・FACTORY

渋谷スクランブルスクエア店

都市の喧騒の中だからこそ、シームレスな間接照明が生み出す静かな美しさが、訪れる人の気持ちを整えてくれる場所を目指しました。

渋谷スクランブルスクエア店

武蔵小山店

真鍮や深みのある木を用い、街の穏やかな空気に寄り添う、少し大人びた落ち着きのある空間に仕立てています。

武蔵小山店

〈博多天神店(仮称)〉

感度の高い福岡のカルチャーに自然と溶け込むような、少しエッジの効いた表現にも挑戦しています。

場所が変われば、集う人も文化も時間の流れも変わります。だからこそ、私たちは同じデザインを繰り返しません。その土地にしかない「唯一の答え」を探し続けることが、建築の本質だと考えています。

ロクメイコーヒー様が「一杯のコーヒーを通して豊かな時間を届ける」という思想を掲げられているように、私たちが手がける建築やインテリアがその想いを引き立てる一助となること。それこそが、私たちの役割であり挑戦です。

 

Q2. 長坂様から見て、ロクメイコーヒーというブランドやスタッフにはどのような印象をお持ちですか?

「思考の深さと決断の速さ。そしてマニュアルではつくれない温かい空気感があります。」

ロクメイコーヒー様とお仕事をご一緒する中で、いつも感銘を受けるのはトップの意思決定の質とスピード感です。徹底的に考え抜いたうえで即座に決断される一方で、強いこだわりを持ちながらも必要であれば迷わず手放す潔さがある。その思考の深さと判断力からは、いつも多くのことを学ばせていただいています。

そして何より素晴らしいと感じるのは、スタッフの皆様との信頼関係です。

私自身がイチ客として店舗を訪れると、どの店舗でもスタッフの方々が自然体で温かく迎えてくださいます。あの心地よい空気感は、決してマニュアルだけで作れるものではありません。日々大切に積み重ねられてきた信頼や価値観が、そのままお店の雰囲気として表れているのだと感じます。

だからこそロクメイコーヒー様は、単にコーヒーがおいしいだけでなく「また帰りたくなる場所」になっているのだと思います。

 

Q3. 「ひとともり」様がモノづくりにおいて最も大切にされている「軸」やこだわりは何ですか?

「大切にしているのは『愛』。最小限の手数で、長く愛される余白をつくることです。」

私たちの事務所が大切にしていることを一言で表すなら、それは「愛」です。人への愛、街への愛、その場所への愛、そして建築への偏愛(笑)。これらがなければ、本当に豊かな空間は生まれないと思っています。

だからこそ流行や他人の評価を追いかけるのではなく、常に本質へと立ち返ることを意識しています。

「本当に必要なものは何か?」

「この場所にとって、一番自然な答えは何か?」

この問いを愚直に繰り返し、自分たちが心から違和感なく「これだ」と思える表現を追求しています。

もう一つ大切にしているのは、「最小限の手数で最大限の効果を生み出す」ことです。要素を足し算して豊かさをつくるのではなく、本当に必要なものだけを丁寧に残す。その削ぎ落とされた「余白」こそが、訪れる人それぞれの時間や感情を受け止める器になると信じています。

建築は、完成した瞬間がゴールではありません。そこで人が過ごし、街に馴染み、年月とともに味わいを深めていく。その時間経過による変化まで含めて設計することが、私たち「ひとともり」の仕事です。

派手さではなく、静かであっても長く愛され続けること。そんな建築を、これからも一つひとつ丁寧に形にしていきたいと思っています。

 

■ プロフィール:ひとともり

「人と森」「一灯」という二つの意味を名に持つ一級建築士事務所。

「生活のデザイン」をテーマに、建築・インテリアデザインを手がける「ひとともり一級建築士事務所」をはじめ、宿泊事業「宿 一灯」、健康・カフェ事業「生姜足湯休憩所」などを幅広く展開。自然や環境、そして人に寄り添いながら、空間と暮らしを豊かに彩るデザインを追求している。